【2022年版】Ender3 購入ガイド 選び方・安全・必要なパーツなど 半年で10万円つぎ込んでわかったこと

3DプリンターのEnder3を購入して2年と半年が経過した。
2020年7月にこの記事を書いたが、最新の情勢を含めて反映する。
最初に知っていたほうが良いこと、ここはきちんと確認しておかなければいけないこと、一つの区切りとしてまとめておく。

あまり積極的に書きたくはなかったが、今後導入を考えている人向けに、安全上の解説も行う。

家庭用3Dプリンターの方式

大きく2種類ある
・FDM 熱溶解積層法
溶かした樹脂を少しずつ積み上げる方式

大きくざっくりした形状を出力したい
力が比較的かかる部品に向いている
20cm四方レベルの大きな部品をすることができる。
装置は大きくなりがちで、設置スペース、熱の発生が気になる。
自分で組み立てるタイプ(左)と出来合い(右)の2種類がある。

作例:ものかけ、ラジコンの部品、蓋、簡単な工具など

剛性が必要なモノ掛けの例

ランニングコストは樹脂材料が主となり、総じて安い部類に入るはず。

樹脂材料は安いものであれば1kg 2000~3000円程度で入手ができる。
実際のところ1gあたり2~3円で済ませられている。
他にはノズルやホース、ヒーター、ファンなどのこまごました部品を備蓄する程度。


・光造形方式
レジンという液体を光で少しずつ固めて引き上げる方式

小さい(130 * 70 * 150mmなど)けど超精密な形状を出力したい
精密なフィギアに非常に向いている、でももろい。落とすと割れることも。
レジンの洗浄、紫外線硬化などの処理や装置も必要
例:鉄道模型、フィギアなど

ランニングコストはレジン代と洗浄用のIPAなどが必要らしい。
レジンは500ccで2000~3000円程度。1ccあたり1gと超乱暴に計算すれば、1gあたり4~6円程度か。

筆者は機械の部品や修理用の部品を作りたかったので、FDM/熱溶解積層法の機種を選んだ。
光造形に比べ、大きなもの(20cm四方)が作れ、レジンの後処理やランニングコストにも悩まされないという意味では正解だったと思う。

ただ、光造形だとフィギアなどの小型のものが中心となり、材料を大量消費するわけではないはず。
フィギアであれば、シタデルカラーとかで着色をするので、色をそろえる必要も少なそう。
FDM/熱溶解積層法だとどうしても大きいものをたくさん作りたくなってしまう。
大きい=材料を大量に消費するため、コストは相当かかっている。
樹脂材の色もそろえたくなってくるもの。金とか、シルクとか艶消しとかまあいろいろ。
さらに使う場所だの応力に応じてABSだとかPLEだとかPETだとか樹脂を使い分けたくなる。
2年半で買った樹脂材料は数えたら25kg超えてる・・・(仮に1kg3000円として75000円)
周囲の様子を見ている限り、全然買っていないほうだと思う。
印刷量にもよるが、プリンタ価格に加えて、材料費も計画に入れておきたい。

Ender3とは

中国の深センにあるCREALITY 3D社が作った3Dプリンタ。
この会社は3Dプリンタを年間80万台程度生産・出荷している。
とにかく、海外Youtuber、海外3Dプリンタサイトでよく見かける。
シェアもかなりのものと推測できる。

日本のAmazonでは正規代理店と、それ以外の複数の業者が出品している。
微妙な仕様違いやブランド違いも多いが、おすすめは正規代理店品。
それ以外でももちろん動くは動くが、部品が少し違っていたり、性能が異なることもある。

V2モデル(右)が後継で発売されている。静音プリント、ガラスの平滑度の高い台、カラーTFT、Minwell電源(台湾本社)が売り。
手軽に試すなら25000円程度のEnder3(左)、
予算に余裕があり、充実した3Dプリントライフを送るなら37000円程度のV2(右)だろう。
筆者はEnder3(左)をV2並みにUpdateして使用しているが、12000円の差額の価値は十分にある。
V2は静音ボードが標準で入っている。(静音でないものは不規則な機械音が結構する&後で入れるのは面倒)
ガラスベッドは必須と考えるし(2020年ごろはEnder3もガラスベット付属だった)、拡張された部分も考えるとV2かなと思う。

基本は組み立て式なので、自分で組み立てる。
組み立てで精度が大きく変わるわけではないような気もするが、
気になって何度か組みなおして水平を出しなおしたりした。

組み立て難易度はやや高め、というのが所感。
機械ものが得意な人向け。

参考リンク

公式サイト(Global):https://www.creality.com/
日本正規代理店公式(株式会社サンステラ):https://www.creality-3d.jp/

https://shop.3d-club.net/

Ender3のいいとこ、強み

・台数が出ており情報量が多い
⇒困ったときに調べやすい 機能改造がやりやすい

とにかくYoutube、Google検索で「Ender3 ***」と入れれば情報はかなり出てくる
英語でもなんとなくわかるし、自動翻訳を駆使すれば簡単に理解できる。
修理、改造も容易でそこはすごくよかったところ。

2万円台で10万円程度の機種同等の印刷結果も狙える(注:単色)
・アフターパーツも多数出ており、Aliexpressを活用すれば安く維持できる


部品一つ一つが安く、
互換部品(相性や加工がいる場合もあるが)もたくさんある。

強化パーツや精度改善パーツ、ソフトウェアを投入で印刷精度を上げられる。
安い機種で、どこまでできるのか?それを試すのも非常に面白い。

Ender3・安全上の懸念

あまり書きたくない話だが、やはり安全は大事だ。

・Ender3のFirm verによってはセンサーがFAILしてもそのまま動作してしまうことがある 

よって熱暴走する、かもという懸念はある(もちろん、必ずしもそうなるとは限らないが)
すでにお持ちの方は確認したほうがよい項目だ。
簡易的な確認方法として、断線検知が働くか見る方法がある。
3Dプリント中に熱電対(ノズル、ホットベッド)をマザーボードから抜く。
対応している場合はすぐに印刷が停止、ヒーターの通電が止まるはずだ。
(面倒なので実施していないが、本来は断線(線抜き)に加え、ショート(線をつなぐ)、異常値(ドライヤーで急速に冷却?)の3パターンで見るべき)

止まらない場合は、公式でファームアップデートをするか、
有志が作ったファームMarlinに変更することである程度解決できる。
熱電対が外れたり、温度範囲外になると直ちに動作が停止するようになる。
導入後、熱電対をわざと外してみると即停止した。

作業自体は下のサイトを見ながらArduinoUnoを使ってできた。
対策したとしても、そもそも熱源を搭載する構造上、留守時に稼働させるのにはリスクが残る。
目の届く範囲で注視して使用したい。

ファーム:https://marlinfw.org/
参考リンク(これらを参考に入れ替えた):
https://make.oldcyclist.com/2018/10/ender3-firmware/

・XT60コネクタの懸案

販売元によっては発熱するコネクタの個体があるらしい。(2台目を正規代理以外で買ったら当たってしまった)
Yotubeでは焦げた画像も出てくる始末。
作動時触れないぐらい熱い。
推測ではあるが、コネクタが正規ではない&カシメがゆるい?

正規品はAmassのロゴがあるものらしく、正規ストアから購入できる。
このサイトによればAmassがパテントをもっているとのこと。
https://www.ep-cosmotech.com/%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC/
XT60 しか書いていないのはどうやら違うモノらしい。

実際にこれを購入した。しっかりAmassのロゴが刻印されていた。

左2(発熱があったもの) 右3(常温になったもの)

比べるとメッキのキラキラ感、作りの精密さは差があるように見えた。
正規のコネクタにしっかりはんだ付けすることで、常温になった。
今のところ安定している。

参考

以上2点の懸念についてはこちらのwikiにも同様の記載があった。
おおむね内容は同じようだ。
https://www.reddit.com/r/ender3/wiki/index

Ender3本体以外に必須そうなもの

本体にもおおむねの工具、必要なものは含まれているが、あったほうがよいものを列挙する。
基本的にプリンタは消耗部品があるものなので、使えば使うほど必要になる。
Amazonで買うと高いので、Aliexpressなどがおすすめだが、届くのに2~3週間程度時間がかかる。
安いAliexpressで買う場合は、故障を見越して大量のスペアパーツを購入している。

・エクストルーダー強化パーツ
おそらく最初に壊れる部分。バネで押し付けているレバーが樹脂のため、ひびが入ってしまう。ほぼ必須ともいえる。

実際に6H程度印刷したらひびが入ってしまった。

メタルでできたパーツに交換したところ、それ以降は再発していない。
プラスチックに比べ熱が伝わりやすいので、
ステッピングモーターの温度が上がりすぎると
PLAがぐんにゃりして引っかかってしまうことがあった。
あと、安すぎるものだったのか、ベアリングがすぐ壊れてしまった。
オリジナルのベアリングを移植して使用している。(2年半25kg印刷でも壊れていない)

・フィラメント(PLA)
付属のものはわずか。まずは印刷が容易なPLA 1.75mmのものを用意。

いろいろなPLAがAmazonにはあるが、安いものは品質のばらつきは大きい。
Lotによって色が違ったり、硬さもちがったりする。
1Kgあたり1600円~2500円ぐらいの間を購入しているが、予算があるなら国産(約6000円~)もよいかもしれない。
よく買っているのは、TINMORRY 、RepRapperあたり。あまりばらつかないイメージはある。
最近出ているAnyCubic やCrealityも一度試してみたい。

・ノズル
ノズルはいずれ詰まる。原因はフィラメントに含まれる不純物が原因らしい。
あと、材料交換時も発生しやすい、内壁に堆積した残存材料が悪さをする、らしい。
アセトン漬け、ライター炙りなど詰まり取り手法も試したが、交換したほうが早い。

ノズルは一回で同じ種類のものを30個程度買うようにしている。
毎回同じ種類であれば、調整不要・ポン付けで終わるので楽。
穴径は速度と精度のバランスがよい0.4mmを使っている。

・予備のホットエンド
慣れない頃は詰まり、対処に時間がかかったり、壊してしまうことがあった。
組付けミスや締め付け不良で、樹脂が漏れてべとべとになってしまったこともあった。

予備が一つあると、安心してつまり解除、分解清掃に取り組めた。
一個しかないというのはなかなか精神的にきつい。

いい動画があったので追記。最初に原理を知っておけば苦労しにくい。
PTFEチューブとノズルがしっかりと密着していないと中に樹脂が漏れてしまい、オーバーホールが必要となる。
先にノズルを設置。その後、上からPTFEチューブを押し込むようにして密着させている。

・PTFEチューブ
案外盲点。チューブの中に溶けたPLAが詰まってしまうと大変面倒。
切るしかなくなる。上記のホットエンドの動画のように、ノズルと密着している部分の劣化が激しい。

たまにホースについている継ぎ手がどうしても外れなくなることもあった。
継ぎ手がついている商品を買っておくとさらに安心できる。

・XT60コネクタ(Amass)
先述の通り、発熱する個体の場合、交換を強く推奨する。

はんだごてでしっかりとはんだ付けして修正したいところ。
交換後は発熱していないことをしっかり確認したい。

・Arduino UNO
先述のカスタムファームに変更するのに必要。
Arduino UNOを書き換え器として使用することで、本体のファームウェアを入れ替えられる。他にも自動平面出しの拡張等を行うときなどにファームをいじる場合使うことになる。

単品よりもケーブル等が入っているものを買ったほうが便利だった。
写真のモノを買ったが、3Dプリンターとつなぐケーブルは足りず、結局自作した。

・火災報知器(煙)& 消火器

印刷時はこれを近くにぶらさげている。少ない煙で反応して鳴る。
お守り代わりに。

まとめ 思っていたよりは安くない・・・かも!?

本体は2~3万円台で買えるが、
維持するパーツをたくさん買わなければならないのでそこまで安くないかも。
増強するパーツ郡だけでも1万は購入して、フィラメントはすでに25本ぐらい買っているので優に40000~50000円はかかっている。
総額で10万越え、だ。
それでも、完成品の専用機に比べれば安い、とは思われる。。。


Ender3は、安価に 3Dプリンタの整備ノウハウを得つつ、立体物を作りたい人向けなんだろうと感じる。
機械いじりしたい、改造したい等の人には最高な一品。
立体物を作りたい、という目的のみなら、専用機を買うほうが幸せになれそう。

ようこそ、3Dプリンター沼へ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です